やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 私が歯科医師になってから早26年が経過している.この間,公私ともにいろいろなことが起こったが,そのなかでもバブル崩壊,阪神淡路大震災,9.11同時多発テロ,東日本大震災は衝撃的であった.しかし,人間はこのような災難に対しても果敢に取り組み,復興し問題解決を行ってきている.やはり多少の時間はかかるが,確実に前進しながら成果を遂げている.つまり,何事にもコツコツと真剣に向き合う姿勢が重要であり,それを忠実に厳守すれば自ずと問題解決へと繋がるはずである.
 では,われわれ歯科業界はどうであろうか? 歯科医師不足の時代とは異なり,以前とは取り巻く環境も年々変化し,現在では過当競争が激化して,マスコミ等ではワーキングプアの代名詞のように取り上げられることも時折見られる.そして,歯科界の救世士であるはずのインプラントが国民の間で物議を呼び,インプラントバブル崩壊という言葉も耳にすることもある.われわれはこの窮地から脱出するためにも,患者さんからの信頼回復は急務である.そして,場当たり的な治療から脱却し,しっかりと診査・診断を行って治療を実践する必要がある.もちろん,確定診断ができない場合は暫定的な診断に止め,早期の不可逆的な治療介入を控えるようにすべきである.カリエスがあるからドリルして充填,それでダメになればラバーダムなしの根管治療.やがて,根尖病変が出現し,治らないから抜歯を行ってインプラント埋入.このようなシナリオを繰り返しても何の問題解決にもならない.時間の壁はあるが,正しいことを実践すれば必ず理解していただけると確信している.先進諸国のなかでも根尖病変の有病率が高い国と呼ばれることのないよう日々精進する際に,本書が読者の先生方の一助になれば幸いである.
 2013年12月
 牛窪 敏博
Introduction 根管治療のコンセプトとは?
Chapter I 再治療における成功率と意思決定
 1 再治療はどうして難しいのか?
 2 再根管治療の成功率は低いのか?
 Column1 治療介入が必要か否か
Chapter II 再治療におけるEvidence & Technique
 1 歯冠修復物・ガッタパーチャはどのように除去すべきか?
 2 破折ファイルは取るべきか,取らないべきか?
 3 パーフォレーションに遭遇したら,どうするか?
 4 ファイルが進まなくなった,目詰まり? リッジ?
 5 根尖破壊はどのようにリカバリーするのか?
 6 見落としの根管はありませんか?
 7 開かない根管,それは石灰化根管?
 Column2 マスターすべき器具操作
 8 歯根端切除術のキーポイントとは?
 9 こんな時こそ意図的再植術
 Chapter IIのPoint
Chapter III 抜髄症例を失敗させないために,どのように根管治療すべきか?
 1 再治療における根管形成と再治療にしないための根管形成とは?

 Frequently Asked Questions
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