やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 「セカンドオピニオン」というのは,担当医師が示す診断や治療法について,患者さんが別の医師の意見を求めることです.歯科の分野でも,セカンドオピニオンを求める風潮は強まっており,私の診療室にも多くの方々がセカンドオピニオンを求めて来院されます.
 「十分機能している歯なのに,抜歯してインプラントを入れたほうがよいと言われましたが,本当に抜く必要があるのでしょうか?」と歯科医師の診断や治療方針に疑問をもつ人,歯を失いたくなくて歯科医院に行ったのに,説明もなく簡単に歯を抜かれてしまったと悲嘆にくれる女性,「口の中全体を治さなくてはいけないと言われ,ほとんどの歯の治療をしたものの,まったく噛めなくなって精神的に不安定になってしまった」と母親の窮状を訴える娘さん…….
 いろいろな相談が持ち込まれてきます.
 そうした方々のお話を伺っているうちに,現代歯科医療の問題点の一つに気がつきました.それは患者さんと歯科医師のコミュニケーションが不足しているということです.
 セカンドオピニオンを求めて来院する患者さんの訴えの裏には,歯科医師の診断のまちがいや技術的なミスに起因する事項も多少はあるのですが,ほとんどの場合,患者さんと歯科医師のコミュニケーション不足がその根底にあるように思います.歯科医師が診断や治療方針を十分に患者さんに説明していない,あるいは説明をしたとしても患者さんがそれを理解しないまま治療が進められてしまっているなどの事例がとても多いと感じます.
 つまり,セカンドオピニオンを求めて来院する患者さんは,担当歯科医師のファーストオピニオンを十分理解しておらず,さらにその歯科医師に質問する機会もないままに悶々として,違う歯科医師に説明を求めるという図式が浮かび上がってくるのです.
 患者さんと歯科医師のコミュニケーションが足りないと,歯科治療は満足する結果になりません.ぜひ,担当歯科医師と十分にコミュニケーションをとっていただきたいものです.しかし現実は,忙しい歯科医院で長々話し込むことは難しいでしょう.ポイントを絞った質問をして,担当歯科医師と話し合う必要があります.
 そのためにこの本が少しでもお役に立てば幸いです.
 二〇一三年 盛夏
 小西 昭彦
第1章 健康保険で「よい治療」を受けられますか?
 健康保険にはルールと限界があります
第2章 歯磨きについて気になること
 (1)どのような歯磨きの方法が一番よいのでしょうか?
 (2)プラークということばをよく耳にしますが,プラークってなんですか?
 (3)むし歯予防や歯周病対策の歯磨きはどのようにすればよいのでしょう?
 (4)1日何回,いつ,どのくらいの時間磨けばよいのでしょうか?
 (5)歯磨き剤はどのようなものを選べばよいのでしょう?
 (6)むし歯予防のための歯磨きを教えてください
 (7)電動歯ブラシと普通の歯ブラシ,どちらがよいのでしょうか?
 (8)歯磨きが苦手です.何かよい方法はありませんか?
第3章 口臭が気になるのですが……
 (1)口臭があるかどうかは,どうすれば調べられますか?
 (2)口臭にはどのような種類のものがあるのですか?
 (3)病的口臭の原因を教えてください
 (4)口臭があるのですが,周りの人は感じないと言います.どうしたらよいのでしょう?
 (5)口臭が気になります.何かよい方法はありませんか?
第4章 むし歯の治療について納得がいかないことがあるのですが……
 (1)小さなむし歯なのに,そんなに大きく削る必要があるのですか?
 (2)なるべく削らずに治療したいのですが,よい方法はありませんか?
第5章 神経(歯髄)の治療について
 (1)神経(歯髄)を取りたくないのですが,そのような治療は可能ですか?
 (2)暫間的間接歯髄覆罩法(ざんかんてきかんせつしずいふくとうほう)
 (3)直接歯髄覆罩法(ちょくせつしずいふくとうほう)
 (4)神経(歯髄)を残したいのは山々ですが
 (5)抜髄法(ばつずいほう)
第6章 この歯を抜かなくてはいけないのですか?
 (1)抜かなくてはいけないと言われましたが,本当に抜く必要があるのでしょうか?
 (2)むし歯が進んで,根だけしか残っていません.抜かなくてはいけませんか?
 (3)歯ぐきにおできのようなものができて,抜歯を勧められていますが?
 (4)歯周膿瘍(ししゅうのうよう)と歯槽膿瘍(しそうのうよう)
 (5)歯周病で歯がグラグラですが,抜かずに治せますか?
 (6)歯が割れてしまいました.担当歯科医師は抜くしかないと言っていますが
 (7)歯が割れて,抜歯となってしまいました
 (8)硬いものをよく噛んで食べるのは歯のためによいことですよね?
 (9)保険診療で抜かずに治すことはできますか?
第7章 歯周病は怖い病気?
 (1)歯が長くなり,下の前歯の重なりもひどくなってきましたが,歯周病でしょうか?
 (2)歯と歯の間の隙間が気になります.治せますか?
 (3)歯と歯の間の隙間が埋まらない場合とは?
 (4)歯磨きすると出血するのですが,歯周病が進行しているのでしょうか?
 (5)歯周病は完治しますか? それとも進行を遅らせることしかできないのでしょうか?
 (6)歯科検診で歯肉炎を指摘されました.どうすればよいのでしょうか?
 (7)歯磨きもしないのに歯周病が進行しない人がいるのはなぜですか?
 (8)夫を亡くして急に歯周病が悪化したように思いますが,何か関係がありますか?
 (9)多量に酒を飲むと次の日歯ぐきが腫れ,また肩こりが激しくなると歯にくるのですが?
 (10)歯周病が脳に回って大変なことになると言われて,とても心配しています
第8章 何年もちますか?
 (1)詰めたりかぶせたりした歯は,何年くらいもつのでしょうか?
 (2)健康保険のクラウンは長もちしないというのは本当ですか?
 (3)一度かぶせた歯がまたむし歯になることはありますか?
 (4)やりなおしたクラウンがすぐ取れてしまいました.歯科医師の腕が悪かったのでしょうか?
 (5)歯が1本抜けてしまいました.差し歯にできますか?
第9章 インプラントはどうなのでしょう?
 (1)インプラントとはどんなのものですか?
 (2)インプラントはどれくらいもつものですか?
 (3)手術は大変ではありませんか?
 (4)インプラントのトラブルということを聞きますが?
 (5)インプラントがだめになったらどうなるのですか?
第10章 一番よい方法,一番よい歯科医院とは……
 (1)一番よい方法で治してもらえますか?
 (2)よい歯科医院を紹介してほしいのですが?

 具合のよい状態で過ごすためには
 あとがき