やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版 序
 このたび,改訂第2版を刊行させていただくことになったことを大変光栄に思います.
 高次脳機能障害をはじめ,神経疾患の臨床に携わる方々を念頭に,脳画像でどのように脳部位を同定するかに重点を置いて,初版を刊行したのが既に7年前となりました.CD-ROMを用いて脳画像のダイナミックな読影方法を紹介しましたが,類書にない方法ということで多くの方々にご支持をいただきました.
 今回の改訂にあたり,以下の点を加筆・修正しました.
 1.大脳の他に,中枢神経系全体のオリエンテーションがつくように,解説を増やした点:冒頭に脳幹および小脳の同定方法を追加しています.
 2.脳回相互の位置関係を把握するための,側面像と水平断面を結び付ける具体的な手順を画像で紹介した点.
 3.近年,急性期の画像診断に必須となった拡散強調画像における脳部位の同定方法について,解説を増やした点.
 4.呈示する症例を見直して,変性疾患も含めて15例に増やした点.
 5.CD-ROMで,画像を見ながら解説文も参照できるようにした点,および理解の助けとなるようにCD-ROM画像の一部をカラーとした点.
 症例の選定にあたっては,前職場である汐田総合病院の各スタッフにご協力いただきました.また,医歯薬出版編集部の塚本あさ子さん,およびクロスメディアご担当者には,細かな注文に対して丁寧に応じていただきました.この場を借りてお礼申し上げます.
 まだまだ読者の皆さんの要望に十分には応えられてはいないかもしれませんが,お気付きの点,ここが知りたいという点などあれば,お知らせいただければ幸甚です.
 本書が読者の皆さんの日常診療,学術活動の一助になることを祈念します.
 2017年5月
 石原健司



第1版 序
 本書は,2006年に医歯薬出版から発行された『高次脳機能障害マエストロシリーズ((2))画像の見かた・使いかた』をベースとして,さらに細かく,さらに深く,脳画像について学ぼうとする方々を対象としてまとめたものです.マエストロシリーズでは十分に説明できなかった点についても補足するように心がけました.
 人間の顔,骨格などが一人ひとり異なっているように,脳の形状も一人ひとり異なっています.本書に掲載した正常対照者の画像も,恐らくは「標準的な」形態ではあっても,同じ画像は二つとして存在するものではありません.実際の症例にあたってみると,本書に掲載された画像とは異なるため,同じ方法では目的とする構造を同定することができない場合もあるかもしれません.しかしそれぞれの脳部位の位置関係は症例ごとに異なるものではなく,基準となる構造からたどる手順を踏めば,高い確率で目的とする構造を同定することができると思います.
 手順を踏んだダイナミックな読影法を私が最初に体験したのは,医師になって2年目,亀田総合病院で神経内科の研修を受けている時でした.本書でも取り上げている「中心前回の同定法その2」は,当時の放射線科顧問,(故)久留 裕先生からご教示いただいたものです.それ以来,脳画像の読影にあたっては,基準となる構造,周囲との位置関係から目標とする構造を探し出すというプロセスを踏むよう心がけてきました.
 本書に用いた画像は「パラパラ漫画」と同じ要領で収録しました.ノートの隅に書いた絵が,ページを繰ることによって動いて見える,というあの手法です.CDには部位ごと,症例ごとに読影の手順に従って画像を収録してあります.パソコンの画面上で,カーソルをクリックする度に,必要な情報が画面に付加されていくので,ダイナミックな読影の手順を体感していただくことができるようになっています.また,書籍だけに目を通しても読影のプロセスを踏めるように,CDに収録した画像と同じものを順番に並べ,必要最小限の解説をつけました.さらに余白には,臨床のミニ知識として“臨床メモ”や“解剖のミニ知識”など,高次脳機能障害について学ぶうえで有用と思われる項目について,簡単に解説してあります.
 本書の刊行にあたっては,医歯薬出版編集部の森本修代さん,塚本あさ子さんに大変お世話になりました.この場を借りてお礼申し上げます.また医学部学生の頃から今日に至るまでご指導いただいた,昭和大学神経内科,河村 満先生,さらに昭和大学神経内科および亀田総合病院神経内科,汐田総合病院神経内科のスタッフの方々に深謝いたします.
 本書が読者の皆さんの日常診療,学術活動の一助となれば幸いです.
 2010年9月
 石原健司
 第2版 序
 第1版 序
総論
 画像を読むために必要な神経解剖
 剖検脳で見る大脳・脳幹・小脳の位置関係
 MRIで見る大脳・脳幹・小脳の位置関係
 脳溝と脳回
 大脳の側面像と脳葉
 前頭葉の細分
 側頭葉の細分
 頭頂葉の細分
 復習
 アトラスの見方
 側面像と水平断面の画像をつなげる
 前方から後方に辿ってみる
 MRI読影にあたって
  コラム 脳溝を追跡するとは
正常編
 水平断
  1 大脳縦裂(大脳半球間裂)
  2 シルビウス裂
  3 側脳室
  4 側脳室下角
  5 脳梁
  6 中心溝の同定
   その1「帯状溝辺縁枝」法 その2「上前頭回」法 その3「逆Ωの字法」
   コラム 「逆Ω」を探してみよう いろいろな症例での中心溝の同定
  7 前頭葉
  8 前頭葉の細分
  9 ブローカ野(下前頭回弁蓋部・三角部)
   Advanced Study:拡散強調画像でどこまで同定できるか
  10 側頭葉
  11 側頭葉の細分
  12 上側頭回(ウェルニッケ野を含む)
  13 海馬
  14 後頭側頭回
  15 頭頂葉
  16 後頭葉
  17 代表的な断面(症例呈示の際に頻用される断面)
  18 大脳白質
 冠状断
  1 大脳縦裂・脳梁
  2 シルビウス裂
  3 前頭葉
  4 側頭葉
  5 側脳室下角
  6 扁桃体
  7 海馬・海馬傍回
  8 海馬傍回〜舌状回,紡錘状回
  9 帯状回
  10 島回(島葉)
  11 後頭葉の脳溝
 矢状断
  1 脳梁
  2 帯状回・帯状溝
  3 後頭葉内側面の脳溝
  4 大脳半球の細分
  5 シルビウス裂
  6 ブローカ野
  7 ウェルニッケ野
症例編
  症例呈示の前に
 1 症例1
 2 症例2
 3 症例3
 4 症例4
 5 症例5
 6 症例6
 7 症例7
 8 症例8
 9 症例9
 10 症例10
 11 症例11
 12 症例12
 13 症例13
 14 症例14
 15 症例15

 参考文献
 索引
 付録 本CD-ROMのご使用にあたって