「4つ球」を応用した 落ちない・浮かない・痛くない・噛める総義歯づくりへの挑戦!
内容紹介
●もともとは補綴家として知られていた著者は,長年,総義歯臨床においてなぜ「痛い,噛めない,はずれる」という問題が解決されないのかという謎解きに挑戦しつづけ,義歯づくりの原理原則とされていることを一つ一つ検証.
●そして,じゃまにならない,噛むほどにフィットする・落ちない・浮かない・痛くない・噛める総義歯についに到達! 本書はその臨床成果を著者の遺稿をもとに一冊にまとめたものである.
●CD-ROMの動画には,咀嚼力が維持力として働く「落ちない・浮かない義歯」が一目瞭然に収載されており,また著者の「まず実践し,徹底的に考え,工夫する」姿勢をも学ぶことができる.
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序(抜粋)
総義歯の製作では「名医になったり,薮になったり」で,あまりにも幅がありすぎる.全力投球でつくったものを「駄目です」と言われ,応急だからと簡単につくったものを「何でも快適に食べられます」と言われたりする.このような経験は誰にでもあるだろう.
どうもこうなると「当たった」「当たらなかった」みたいな話になってしまい,歯科医としては身の置きどころがないという気持ちになってしまう.私は,このように「笑うに笑えない話」のなかに,総義歯づくりの真実がひそんでいるように思うのである. 2002年1月 丸森賢二
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この本に寄せて(抜粋)
いま,丸森さんの義歯づくりを振り返ってみると,この本に書かれているとおりのことを実に丹念に,少しの隙もなく,歯科技工士の生田龍平さんとも話し合いながら丁寧にやっていたことが思い出される.印象採得,試適などは実によく書かれており,私の義歯がどのようにつくられたのかよくわかった.
完成後もチェックはしてもらったが,何も手は加わっていない.調整の必要がないということである.そして3年近くなるいまも,大口を開いて皆にみせてもビクともしないほどに安定している.
私の義歯が完成した後,半年足らずで丸森さんはあの世に去ってしまったので,おそらくこれが最後の総義歯だろうと思う.そんな意味でも私にとっては思い出の深い義歯となっている.
2004年9月 榊原悠紀田郎
目次
2編 咀嚼圧が維持力として働く義歯の製作
2章 咬合採得
3章 人工歯排列
4章 咬合圧印象(吸着を求める印象)
5章 義歯完成
6章 臨床応用
著者所属/略歴 ※本書が刊行された当時のものです.現在とは異なる場合があります.
丸森 賢二【まるもりけんじ】
1921年 札幌市に生まれる
1942年 東京歯科医学専門学校卒業
1945年 東京歯科大学市川病院(口腔外科)勤務
1948年 原田良種先生に師事
1958年 横浜市に開業
横浜歯科臨床座談会の分科会として,
1971年4月に「むし歯予防研究会」,
1983年9月に「歯科保健教育勉強会」,
1990年3月に「歯科技工士の患者体験を製作物に生かす会」,
「義歯の謎を解く会」
をそれぞれ開始
2002年3月9日 逝去(享年80歳)