オーバービュー:脳卒中リハビリテーションと糖尿病 |
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上月正博 |
Key Words |
脳卒中 糖尿病 再発 リハビリテーション |
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内容のポイントQ&A |
Q1 |
脳卒中患者において糖尿病合併の頻度は? |
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わが国では脳卒中患者の19〜24%に糖尿病を認めたという報告がある.さらに脳卒中回復期リハ患者の76%に耐糖能異常を認め,歩行困難例においてその割合が高い.脳卒中発病前からの耐糖能異常に加えて,脳卒中に起因する身体活動量の低下がインスリン抵抗性を悪化させた可能性が考えられる. |
Q2 |
糖尿病を合併した脳卒中患者は一般の脳卒中患者とどう違うのか? |
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糖尿病が動脈硬化性疾患を増加させる影響力は,加齢15年分に匹敵する.糖尿病の合併した脳卒中患者が一般の脳卒中患者と違う点として,(1)合併症の多さ,(2)機能予後不良,(3)リハの留意点の多さ,(4)脳卒中再発率の高さ,があげられる. |
Q3 |
糖尿病を合併した脳卒中患者ではどのような合併障害が起こるのか? |
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糖尿病がもたらす障害の基本は血管障害であり,糖尿病性大血管病(脳卒中,冠動脈疾患,末梢血管疾患),糖尿病細小血管病(網膜症,神経障害,腎症),足病変等多様でありかつ全身に及ぶ特徴があり,脳卒中の機能的予後の回復阻害因子になっている. |
Q4 |
リハ施行時のリスクと留意点は? |
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あらかじめ運動負荷試験等により,虚血性心疾患の存在等のスクリーニングを行うことが重要である.個々の患者の身体的,精神・心理的,社会的背景および本人の希望の個人差を十分考えて,個々に治療目標を立て,包括的に診療にあたることが肝要である. |
Q5 |
リハは脳卒中・糖尿病の予後を変えるのか? |
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リハは脳卒中の機能予後を改善する.適度な運動は脳梗塞の再発予防法のひとつにあげられている.しかし,その推奨する運動量は高めであり,今後,低い運動レベルでも効果があるかの検証も必要である.運動療法は糖尿病の有用な治療法であり,予後を改善する.リハ医とその関連職の有する「技」と「環境」を十分に活用し,多面的アプローチによるトータルケアを通じて,確実な機能予後改善や再発予防を期待したい. |
難渋例から学ぶ 糖尿病のあるケースへの脳卒中リハビリテーション(1) 脳卒中発症前に未コントロールの糖尿病があり,両者の治療を並行し在宅生活に移行した2症例 |
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岡田真明 |
Key Words |
脳卒中 糖尿病 運動療法 血糖コントロール |
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内容のポイントQ&A |
Q1 |
リハ計画,ゴール設定は?(通常の脳卒中リハとの違い) |
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通常の脳卒中リハの計画に,血糖コントロールを並行する形で実施する. |
Q2 |
糖尿病をコントロールしながら行うリハ(運動療法)は? |
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運動療法を行うことで血糖コントロールは容易になり,身辺全介助の症例においては離床を進めることも有効である. |
Q3 |
どこまでリハで行ったか?(内科専門医へのオーダー,連携など) |
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単科のリハ病院であり,投薬調整を含めてリハ医が実施した. |
Q4 |
患者への指導は? |
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本人・家族への指導をリハ医・看護師・栄養士から実施した. |
Q5 |
症例の経過は?(予後,効果など) |
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機能障害程度が異なる症例だが,いずれも血糖安定し,自宅退院した. |
難渋例から学ぶ 糖尿病のあるケースへの脳卒中リハビリテーション(2) 維持期にかけての難渋例の経験 |
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小林 充 岡部祐二 |
Key Words |
脳卒中 リハビリテーション 糖尿病 維持期 インスリン |
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内容のポイントQ&A |
Q1 |
リハ計画・ゴール設定は?(通常の脳卒中リハとの違い) |
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合併症による既存障害の評価を正確に行うことである.リスク管理や体力面で影響の大きいmacroangiopathyや腎症に加え,種々の程度の視力障害や知覚障害は,獲得された能力の現実生活への適応面ではその安定性や汎用性に影響してくると思われる. |
Q2 |
糖尿病をコントロールしながら行うリハは? |
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慢性期においては,機能訓練や糖尿病のコントロールさえも包括的なケアの優先順位のなかで判断する必要がある. |
Q3 |
どこまでリハで行ったか? |
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地方小規模ケアミックス病院の入院診療において,ほとんどの場合,総合診療志向の主治医+横断チームとしてのリハ機能(リハ医)という組み合わせで対応されている.経験は少ないが,基礎にある糖尿病がI型の場合,糖尿病専門医の協力が必要かもしれない. |
Q4 |
患者への指導は? |
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慢性期の場合,患者の障害,家族の介護力,利用可能な医療介護サービスを総合的に勘案して現実的に役割を割り振ることが重要と思われる. |
Q5 |
症例の経過は? |
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糖尿病・脳卒中それぞれが大変大きな問題だが,どちらもさらなる合併症の要因となりうる疾病であり,また,高齢であれば整形外科的問題や認知症等の問題や介護力等の背景要素も変化しやすくなる.長期的にはそれら全般に対する包括的な対応力が予後に影響すると思われる. |
難渋例から学ぶ 糖尿病のあるケースへの脳卒中リハビリテーション(3) 低血糖のコントロールに注意を要した症例 |
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湧上 聖 |
Key Words |
低血糖 インスリン 血糖チェック HbA1C 病歴 |
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内容のポイントQ&A |
Q1 |
リハ計画,ゴール設定は?(通常の脳卒中リハとの違い) |
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リハ計画は低血糖を予測し注意しながら行う.入院中の食事エネルギー管理と徐々にリハ負荷量が大きくなることにより,低血糖になる可能性が出てくるので,血糖チェックを行いながら慎重に行う. |
Q2 |
糖尿病をコントロールしながら行うリハ(運動療法)は? |
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運動療法を実施するに先立って運動負荷試験を実施することにより,運動能力に応じた安全で効果的かつ定量的な運動強度を知ることができ,低血糖の予防になる. |
Q3 |
どこまでリハで行ったか?(内科専門医へのコンサルト,連携等) |
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低血糖の管理のために,インスリン量の設定,血糖コントロールの方法の変更等を行う.そのうえで,インスリン治療が必要なのか判断が困難な場合は,糖尿病専門医にコンサルトする. |
Q4 |
患者への指導は? |
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低血糖が起こる可能性,低血糖症状の特徴,対処方法等を事前によく説明する. |
Q5 |
症例の経過は?(予後,効果等) |
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低血糖発作は重篤になると致死的な状態になるため,その予防は重要である.HbA1Cが6.0%前後とコントロール良好で,インスリンや経口血糖降下剤を使用している場合は,低血糖発作に注意が必要である. |