ベーシックとなる医学的知識と患者の把握 |
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関根龍一 |
Key Words 放射線療法 化学療法 トータルペイン 緩和的リハビリテーション リンパ浮腫 |
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内容のポイントQ&A |
Q1 |
現在行っているがん治療の把握は(放射線療法,化学療法など)? |
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個々の患者が受けるがん治療の内容は,最近ますます多様化している.リハビリテーション(以下リハ)スタッフが,がん治療の内容の概要とその影響について,把握することは重要である.がん治療が身体面,心理面に及ぼす影響や,患者の今後の状態をある程度予測することによって,個別的な目標に添ったリハが可能となる. |
Q2 |
体力低下の原因は? |
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進行がん患者では,さまざまな原因で体力低下が生じる.リハスタッフは,身体機能の低下予防のリハを行うだけでなく,リハ実施の困難因子を他の治療メンバーに情報提供する役割を担う.体力低下の原因ごとに,多職種チームメンバーが,それぞれ可能な治療介入を行い,全体としてのQOLの維持,向上を目指す. |
Q3 |
痛みの把握は? |
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リハスタッフは,患者のリハ中の体動時痛を評価する.リハ前に鎮痛薬を使用する場合には,鎮痛薬の効果について治療スタッフに伝える.外的侵襲からの身体防御のサインでもある体動時痛がひどい場合には,どの程度までリハをするかの判断を,治療チームメンバーによる症例検討によって決定する. |
Q4 |
低栄養状態の把握は? |
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リハスタッフが,がん患者の低栄養のさまざまな原因について理解することは重要である.今後のリハ実施内容の方向性は,低栄養の原因やその原因が可逆的か,あるいは不可逆的かによって,左右される.個々の患者の低栄養状態にあわせたリハ内容について,患者・家族,治療メンバーと話し合うことが目標である. |
Q5 |
リハに影響を与える副作用は(めまい,吐き気,不眠など)? |
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吐き気,倦怠感などのリハに支障のある症状が強い場合には,その症状の治療をまず優先し,リハは体調に合わせた内容に留める配慮が必要である.がん治療に伴う副作用の期間や回復の見込みを理解することにより,リハが進まずに焦る患者・家族に対する心理面のサポートを行うことが可能である. |
リハビリテーションとサイコオンコロジーの連携について |
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黒田佑次郎 坂田尚子 早乙女貴子 岩瀬 哲 中川恵一 |
Key Words サイコオンコロジー 精神症状のアセスメント 心理的介入 リハビリテーションとの連携 チーム医療 |
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内容のポイントQ&A |
Q1 |
不眠,不安,うつ,呼吸苦などへのサポートは? |
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不眠,不安,うつはがん医療において多く認められる精神的な問題であり,呼吸苦に関しても終末期になるにつれ重要な問題となる.起こりうる精神症状に対する理解を深め,適切な評価と介入を行う必要がある. |
Q2 |
セラピスト(PT,OT,臨床心理士など)はどのようにかかわるか? |
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すべての医療者が心理的ニードを認識し,適切な情報提供,理解の確認,共感,敬意といった基本的なコミュニケーション技術を身につけることが推奨される.また,がんの経過の重要な局面で行う心理的スクリーニングや不安などのマネジメントに関しては,心理的知識を有する医療者および訓練と認定を受けた専門家に,適切な形で紹介されることが望ましい. |
Q3 |
病棟ケアのあり方は? |
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病棟でも上記と同様に,すべての医療者が心理的ニードを認識し,さらに専門家とともにチームとしてサポーティブな関係を構築しつつ,患者の心配や感情を引き出す.また,より深刻な苦痛を有する患者に対しては心理的介入の専門家へ紹介する. |
Q4 |
リハスタッフへの要望は? |
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リハスタッフは直接的な介入を通して,患者の心情を探ることができる職種である.つまり,リハスタッフが患者の心理的苦痛に対して理解を深め,適切なスクリーニングツールを用いることにより,早期に心理的苦痛を発見し介入に結びつけることが可能となる.どの施設にもリファーできる精神保健専門家や訓練と認定を受けた専門家がいるわけではないが,施設内に心理的知識を有する医療者がいるか,相談の窓口をもっているかを確認し,適切な介入に結びつけることによって,がん患者の心理的苦痛を軽減することができる. |