高齢者のうつと認知症 |
|
|
先崎 章 稲村 稔 儘田 孝 |
Key Words 認知症 うつ病 仮性認知症 混合型認知症 発動性低下 |
|
|
内容のポイントQ&A |
Q1 |
高齢のリハ患者に発症するうつや認知症の原因としてはどのようなものがあるのか? |
|
リハ患者に発症するうつ病としては,(1)内因性のうつ,(2)現疾患に直接に起因するうつ,(3)現疾患による機能障害,社会機能の低下への反応として起こったうつ,などがある.また,認知症としては,(i)加齢や疾患の経過による認知症,(ii)脳血管障害を起因とする認知症,(iii)うつや意識障害(せん妄など)による可逆性の認知機能低下を認める認知症(仮性認知症),があげられる.しばしばいくつかが複合している. いずれも発動性の低下,意欲低下を多く認める.(1)〜(3),(i)〜(iii)のそれぞれの場合で対応が異なるので鑑別が必要である. |
Q2 |
高齢者のうつと認知症の鑑別のポイントは? |
|
うつによる仮性認知症(iii)と認知症(i,ii)との鑑別は外に現れている症状だけでは難しい.抑うつ気分を伴っていなければ認知症による発動性の低下(i,ii)である可能性が高い.しばしば抗うつ剤投与後の週〜月単位の様子によって,結果的にわかる.また,うつ((1)〜(3))とアルツハイマー型認知症(i),脳血管性認知症(ii)の3つが混在していることもしばしばあり,その様相は月〜年単位の経過で明らかとなっていく. |
Q3 |
うつの治療は? |
|
高齢者が内服しても副作用の少ないSSRIやSNRIが汎用されている現在,大うつ病性障害の治療アルゴリズムに則って薬物治療を行う.もちろん,いかなる場合でも,同時に心理社会的側面への対応が重要である.リハ評価や訓練が過度に負担にならないようにすることが望ましい.身体機能低下が改善し日常生活動作が拡大する過程でうつが軽減する例もよく経験する.本人の状態を個別に把握・検討し,リハの負荷やゴールを達成可能なものに変更,誘導していくことが必要である. |