オーバービュー−回復期リハにおけるリスク管理 |
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小林由紀子 赤星和人 |
key words 回復期リハビリテーション リスク管理 合併症 事故 連携 |
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内容のポイントQ&A |
Q1 |
回復期患者はどんな合併症をもつのか? |
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回復期リハ病棟には,脳血管疾患,整形外科疾患,廃用症候群などの患者が入院しており,それぞれに頻度の高い合併症がある.脳血管疾患における再発,痙攣,誤嚥性肺炎や尿路感染などの感染症,整形外科疾患における深部静脈血栓症や肺塞栓,創部感染,廃用症候群における原因疾患の再発・再燃などがあげられる.患者は高齢者が多く,循環器疾患,糖尿病といった内科疾患や運動器障害が病前から併存している率が高い.運動器障害や認知機能障害のある患者が対象であるため,転倒・転落のような事故の頻度も高い. |
Q2 |
合併症や抱えるリスクの管理は? |
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頻度が高く予見できる合併症は,評価・予防によってその発生や重症化を防ぐことが重要である.転倒・転落や離院などの事故,投薬や処置にまつわる医療ミスを防ぐための対策も必要である.リハ医療における安全管理・推進のためのガイドラインが策定され,リハにかかわって起こりうるリスクやその予防・対処法,訓練中止の基準が示されている. |
Q3 |
回復期病棟の転院が早まったことによる新たな問題は? |
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平成18年度診療報酬改定や急性期病院における在院日数短縮化の方針により,発症から回復期リハ病棟へ入院するまでの期間は短くなっている.早期から集中的にリハに取り組む利点は大きいが,急性期管理が不十分な例が増えている.積極的なリハやADL向上に取り組むのが困難な例もある.医療管理の必要度が高くなると病棟全体の運営に影響が出てくる.一方で急性期病院からは全身管理のできる診療体制を望まれており,回復期リハ病棟の能力向上は当然ではあるが,自病棟の対応能力を見極め,他科や急性期病院との連携体制も必要である. |
Q4 |
リスク管理に関して,病棟専任医※の役割は? |
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リハ医は広い分野にまたがる疾患とそれに伴う合併症への対応を求められている.回復期リハ病棟の医師の役割として,合併症やリスク管理への自己の対応能力の向上,看護師・リハスタッフをはじめとする自病棟全体の能力向上のための教育,リスク管理システムの構築,他科医師との連携,急性期病院との連携などがあげられる. |
Q5 |
回復期病棟から急性期病床へのリターン率は? |
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全国回復期リハ病棟連絡協議会のアンケートでは,退院経路のうちで急変による転院・転棟と死亡を合わせた頻度は,全体としては6〜7%で,平成18年度以降も有意な増加はない.しかし,急性期転院率が上昇したとの報告もある.廃用症候群,脳血管疾患は整形外科疾患に比べ急変率が高い.
※ 平成20年度診療報酬改定で,回復期リハ病棟における医師の専従要件は外れ,常勤の専任医1名以上を配置と規定された. |
重度循環器疾患があっても行う回復期リハ・アプローチ |
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大野重雄 梅津祐一 大野素子 藤田雅章 浜村明徳 |
key words 循環器疾患 回復期リハビリテーション病棟 医療連携 包括的リハビリテーション |
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内容のポイントQ&A |
Q1 |
循環器疾患合併時のリハビリテーション評価は? |
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急性期病院における循環器疾患に対する精査治療状況や方針を詳細に把握する必要がある.当院では急性期病院からの紹介患者に対して医師を中心とした病院訪問を直接行うことにより「face to faceの医療連携」を行い,この問題を解決している. |
Q2 |
狭心症合併時のリハビリテーションはどう行うべきか? |
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安定狭心症に関しては運動負荷試験を参考にリハを行う.常に不安定狭心症に注意する必要がある. |
Q3 |
心不全合併時のリハビリテーションはどう行うべきか? |
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身体所見,心電図,胸部X 線,BNP,心エコーなどの所見を正確に評価し,NYHA分類,Killip 分類,Nohria分類などを参考にする.心不全に対する運動療法を安全かつ有効に実施するためには,経過中のモニタリングと定期的な運動処方の見直しが必須である. |
Q4 |
他科専門医/急性期病床移送の判断基準や手続きは? |
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不安定狭心症への移行・出現,心不全でNYHAIVに関しては当院循環器医師に相談のうえ,急性期病院へ逆紹介を行っている. |