Q1. |
ALSにおけるNPPVの臨床効果は?
ALSの進行を止める有効な治療薬はないが,NPPV(Noninvasive positive pressure ventilation)による陽圧換気療法は呼吸不全症状である低酸素血症や脳や筋肉を含む諸臓器の機能を改善する.ALSの呼吸筋力低下は運動ニューロンの変性によるものだけでなく,呼吸筋疲労が加わっているため一定時間,陽圧換気を行うことで,呼吸筋が休息し筋力の回復も認められる.具体的にはALSの進行による%FVCの低下率が軽減する.上手にNPPVと機械的排痰(MAC)を組み合わせれば明らかにTPPVのタイミングを1年以上遅らせられ,QOLも向上する.
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Q2. |
NPPVの開始のタイミングとインフォームドコンセントは?
NAMDRCのconsensus conference reportはALSにも利用され,診療ガイドラインがつくられているが,その基準より早く開始するほうがよい.早朝の頭痛,夜間のSpO2トレンド,労作時の呼吸困難感,%FVCを参考にするが,呼吸困難感を感じる前に導入・装着し慣れてもらうと成功率が高まる.ALSは嚥下障害をおこすため,PEGを先行させる必要がある.呼吸不全が高度(%FVC50%未満)になってからのPEGは難易度が高く,NPPV使用中の経鼻胃管はリークの原因となる.栄養障害はNPPVの阻害要因となる.上記のインフォームドコンセントのためには多専門職種ケアアプローチをもとにした信頼関係が最も重要である.
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Q3. |
装置,マスクの選択は?
マスクは種類とサイズを数種類準備し慣らしながら患者に合わせこむ.球麻痺の程度が少なく,閉口できる場合は鼻マスク,それ以外は鼻口のフルフェイスマスクを第一に選び,リーク量をみながら試行錯誤する.トータルフェイスマスクはALSにも大変有用である.ナラティブに基づく医療(NBM)を利用した心理的サポートが成功率を高める.通常,Bilevel PAPの機能をもつNPPV装置を選び,S/Tモードで開始する.患者とのコミュニケーションと装置にメモリーされた実測の呼吸パラメータをパソコンに転送し同時にSpO2トレンドを参照して調整する.
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Q4. |
NPPVの導入・継続困難例の分析と対処は?
呼吸理学療法,PCF(ピークカフフロー)の測定とカフアシスト(MAC,機械的排痰)の併用が必須である.NPPV導入維持困難例には導入時期の遅れ,マスクと装置選択や設定の不適合,呼吸理学療法とMACの未導入,PEGの未導入や栄養障害,心理的アプローチの不足,患者・家族の不安や相互の信頼関係の不良,呼吸ケアチームの不在や患者・家族との信頼関係の欠如等の理由があり,解決を図る必要がある.MACで十分に排痰できない場合はNPPVの継続は困難となるため,TPPVも考慮する.
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