Q1. |
NSTとは何か?
栄養管理を症例個々に応じて適切に実施することを栄養サポートといい,これを各科間の垣根を越え,しかも医師のみならず看護師,薬剤師,管理栄養士,そして検査技師やリハビリテーション・スタッフらがそれぞれの専門的な知識・技術を活かしながら一致団結して実施する集団をNST(Nutrition
Support Team:栄養サポートチーム)という. |
Q2. |
栄養アセスメントと栄養補給法の選択はどのように行うか?
栄養アセスメント(評価)には,(1)主観的評価法と(2)客観的評価法がある.主観的評価法は,主に一次スクリーニングとして用いられ,基本的アセスメント法を身につけた検者が主観的に栄養障害の有無をチェックする方法や,最近では患者・家族による自己評価(self
assessment)によるものがある.客観的評価法には,身体計測法と血液化学的検査法があり,一次あるいは二次スクリーニングや経時的変化をみる際に用いられている.栄養補給法の選択には,できる限り消化管を用いるという大原則があるが,まず消化管が安全に使えるならば経腸栄養・経口栄養を主体とする.それが困難な場合であってもできる限りリスクの低い末梢静脈栄養法を選択し,長期の経口・経腸栄養が困難な場合に中心静脈栄養法を実施する. |
Q3. |
特に高齢者医療に重視される理由は?
高齢者の栄養状態を規定する種々の因子には,(1)脳血管障害などの複数疾患を有することが多い,(2)食欲低下や嗜好品の偏重,咀嚼・嚥下障害,下痢,便秘などにより十分な食事摂取ができない,(3)高齢者のひとり暮らしや高齢夫婦のみの生活など栄養不良を惹起する種々の社会的背景を有する,(4)低い運動機能,(5)老人性のうつや不眠よる食事摂取量の減少などがある.このような因子が重なり合って高齢者では栄養障害あるいは潜在性栄養障害(LOM:likelihood
of malnutrition)を有する症例が多い.栄養障害症例はもちろんのこと,高齢者は入院時に明らかな栄養障害は認められなくとも,入院期間中に栄養障害をきたす可能性がある.またそれにともなって褥瘡や肺炎などの種々の感染症などが発生したり増悪したりする.NSTはこれら高齢者の栄養状態をチェックし,適切な栄養管理を実施することで,これらの併発疾患の発生を予防し,たとえ高齢者であっても若年者や壮年者と同じような経過で治療を進めることを可能とする.そのため高齢者医療の確立に栄養療法(特にNST)はなくてはならないものとされている. |
Q4. |
リハビリテーションとの連携は?
エネルギーや栄養素の摂取は生体にとって欠くべからざるものである.したがってこれらの投与不足は,筋蛋白の崩壊を増長し,嚥下機能やADLの低下を惹起する.このことを忘れてリハビリテーションのみを実施してもその効果は十分に得られない.また,リハビリテーションを実施することによって必要とされるエネルギーは増大し,蛋白(アミノ酸)を中心とする栄養素の消費も増加する.NSTの稼働はこのような代謝・栄養学的な見地からリハビリテーションの活動を支援し,その効果を増幅する.特に各種手術の周術期,外傷や脳血管障害の治療,あるいは種々の病因による重症症例の管理のうえでは,まずは適切な栄養管理を実施することが大切で,同時にリハビリテーションを行うことは治療効率を増大するとともに,種々の合併症の回避にも大きく貢献するものと考えられる. |