特集 回復期リハビリテーション病棟
−在宅へつなげるリハの展開
回復期リハ病棟におけるリハの展開
浅山 滉
Key Words:介護保険 回復期リハビリテーション病棟 高齢社会 在宅ケア 施設ケア
当院における取り組みと提言 I
大島 峻
Key Words:回復期リハ病棟 患者の流れ 在宅復帰率 入院前診察
内容のポイントQ&A
Q1. |
マネジメントに必要なリハ医の能力とは?
(1)患者の確保,(2) Patient Flow Management,(3)リハスタッフの教育と管理である. |
Q2. |
回復期リハ病棟における各職種の役割は?
(1)情報の一元化,(2)リハ方針の統一,(3)役割の分担(クリニカルパスによる)である. |
Q3. |
回復期リハ病棟の訓練の実際は?
生活のすべてに全職種が参加し,日課表の確立を図る. |
Q4. |
在宅復帰率向上への取り組みは?
入院前診察による回復期リハ病棟の入院目的の明確化,および退院計画,ならびに在宅支援を行う.
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Q5. |
回復期リハ病棟への提言
(1)回復期リハ病棟の真の目的はPatient Flow Managementにある,(2)医療経済的見地から運営と実践がなされなければならない.
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当院における取り組みと提言 II
衛藤 宏・佐藤浩二・桑野慎一郎・後藤洋一・有田 眞
Key Words:回復期リハ病棟 カンファレンス(定期,軒下) カルテ一元化 情報の共有化 経過的ケアプラン
内容のポイントQ&A
Q1. |
マネジメントに必要なリハ医の能力とは?
リハはチーム医療である.よって,リハ医はチームを構成する各職種をまとめるコーディネーター兼コンダクターとしての能力が必要となる. |
Q2. |
回復期リハ病棟における各職種の役割は?
PT・OT・ST・Ns・MSWは,その専門領域のみにこだわるのではなく,垣根を越えて横断的に機能しなくてはならない.そのためには,緊密な情報の共有,カルテの一元化が必要である.リハ医は,その流れを調整し最良の方向に向けるコンダクターたるべきである. |
Q3. |
回復期リハ病棟における訓練の実際は?
訓練室訓練偏重でもなければ,病棟ADL訓練偏重でもない.回復期リハの患者はその病態や退院後の生活を配慮して,その重心をフレキシブルにしてタイムリーなリハを行うべきである. |
Q4. |
在宅復帰率向上への取り組みは?
早期の的確なゴール設定,綿密なカンファレンス(定期・軒下),入院当日からのMSWの介入,経過的ケアプランの作成,そして退院前在宅訪問の実施,これらすべてを整然と行うことが肝要である. |
Q5. |
回復期リハ病棟への提言
回復期リハ病棟の質を高めるには,各職種が1人の患者およびその家族の情報を共有し,その患者へOnly Oneのリハを提供することが理想である.そのためには,やはり優秀なスタッフ,そしてどうしてもマンパワーが必要となる.限られた条件のもと,最大限の努力のなかで結果を出し,回復期リハ病棟の価値をアピールするしかない. |
当院における取り組みと提言 III
古閑博明・山鹿眞紀夫・田中智香
Key Words:回復期リハビリテーション病棟 在宅復帰率 地域連携 在宅支援 地域完結型
内容のポイントQ&A
Q1. |
マネジメントに必要なリハ医の能力とは?
回復期リハ病棟の専従医はリハ認定医以上が望ましい.当病棟には疾病が安定しないまま転入してくるため,主治医はリハに加えて疾病の治療も行わなければならず,マネジメントできる患者数は20人程度であろう. |
Q2. |
回復期リハ病棟における各職種の役割は?
多くの職種がかかわり,密な情報交換が必要で,頻回にカンファレンスを開催している.他に情報交換の手段として,できるADL伝達のため,実際の写真・説明を掲示したOTボードを活用している. |
Q3. |
回復期リハ病棟における訓練の実際は?
PT,OTとも訓練室を閉鎖して全員で病棟訓練のみ行う時間帯を1時間作っている.しかし十分に,訓練単位を請求できない疾患があり,病棟訓練は看護師も行っている. |
Q4. |
在宅復帰率向上への取り組みは?
回復期リハ病棟だけの機能を高めても,在宅復帰率は向上しない.できるだけ早くゴール設定を行い,地域連携部を含めたスタッフ全員が共通の認識をもち,患者,家族を指導し,在宅復帰率向上へ取り組んでいる. |
Q5. |
回復期リハ病棟への提言
亜急性期の集中的なリハを行う回復期リハ病棟が機能するためには,発症早期より重症例も受け入れるための医療能力の充実が必要である. |
当院における取り組みと提言 IV
−脳卒中を中心に
畠中めぐみ・矢倉 一・宮井一郎
Key Words:回復期リハビリテーション 脳卒中 ストロークユニット チームアプローチ EBM
内容のポイントQ&A
Q1. |
マネジメントに必要なリハ医の能力とは?
多角的チームアプローチのなかで,リハ医学,神経学の専門知識をもち,脳卒中に特有な合併症に精通し予防できること,ひいては,チームを全体的な視野から統合する力量をもつこと.とくに診療報酬改定の影響で,より発症後早期の患者の割合が増加しており,このようなニードが高まっている. |
Q2. |
回復期リハ病棟における各職種の役割は?
各職種がミーティングで情報交換を定期的に行い,各々の問題点,治療方針,ゴール設定に共通の認識をもつこと. |
Q3. |
回復期リハ病棟における訓練の実際は?
リハ室でのADLと病棟でのADLに差がないこと,家族の訓練も積極的に行われること,画一的なアプローチでなく個々の患者に合わせたきめ細やかな対応がなされることが必要である. |
Q4. |
自宅復帰率向上への取り組みは?
リハチームの各スタッフが,患者の医学的状態,訓練内容,リハゴールおよびその達成度,自宅復帰のために必要な社会的資源などについて情報を共通することが重要である.実際,当院の,脳卒中に特化された回復期リハ病棟でのチームアプローチにより,一般リハ病床に比べ,重症患者の有意に高い自宅復帰率が達成できた. |
Q5. |
今後の回復期リハ病棟のありかたは?
回復期リハ病棟の有効性に対する医学的,神経科学的,医療経済的なエビデンスを検証すると同時に,自宅復帰したという事実だけでなく,在宅介護における介護量の軽減や生活の質のレベルが退院後も維持されているかどうかが重要で,今後はリハ効果を維持するための地域リハや外来リハとの連携も問われる. |
当院における取り組みと提言 V
大田哲生・木村彰男
Key Words:回復期リハ病棟 リハビリテーション 在宅 リハアプローチ 廃用症候群
内容のポイントQ&A
Q1. |
マネジメントに必要なリハ医の能力とは?
患者の病態を正確に把握し,適切な治療方針を示すとともに,スタッフや患者家族とのコミュニケーションを良好に保つ能力が必要. |
Q2. |
回復期リハ病棟における各職種の役割は?
患者のADL拡大のためには各職種の役割をわける必要はなく,仕事が重複している各職種間でのコミュニケーションをいかにとるかが重要となる. |
Q3. |
回復期リハ病棟における訓練の実際は?
回復期リハ病棟だからといって特別に行っていることはなく,食事や着替えなどのADL動作に関して以前よりスタッフが関与して行っている. |
Q4. |
在宅復帰率向上への取り組みは?
機能やADL改善のための訓練を十分に行うことはもちろんのこと,家族の介護指導,家屋改造の助言,介護保険などの利用による家族の介護負担の軽減方法を検討している. |
Q5. |
回復期リハ病棟への提言
リハ訓練の必要な時期に十分な訓練期間をとれることは非常に良い点だが,病床コントロールや外来訓練などに関する問題点を抱えており,制度上改善すべき点はあると考える. |
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