特集 重症患者のベッドサイドリハビリテーション

意識障害患者へのアプローチ
 栢森良二・三上真弘
 Key Words:意識障害 植物状態 リハアプローチ 誤用症候群 リスク管理

内容のポイントQ&A
Q1. どんな疾患でおこるか?
 テント上占拠病変(脳血管障害,脳外傷など),テント下病変(脳幹脳血管障害など),代謝性脳症(低酸素脳症,薬物中毒など)などでおこる.
Q2. リハ処方時に注目すべき理学所見・検査項目は?
 意識障害や全身状態に関する情報,バイタルサインを確認する.これに基づいてベッドサイドリハに関する適応と禁忌を明確にする.
Q3. 訓練内容は?
 廃用症候群の予防に対する基本的リハ・プログラムと覚醒のための感覚入力である.
Q4. リスク管理は?
 意識障害,二次的合併症,誤用症候群の3つに対するリスク管理があり,訓練時に症状と徴候を観察し,バイタルサインをモニターする.
Q5. リハのステップアップは?
 絶対安静からsemi-Fowler位,90°座位,リクライニング車椅子で座位耐性訓練を順次実施する.バイタルサイン安定化あるいは意識障害の改善に伴って訓練室に移す.



レスピレーター管理とリハビリテーション
 菊地尚久・水落和也
 Key Words:人工呼吸 リスク管理 ウィーンニング 呼吸リハビリテーション 排痰手技

内容のポイントQ&A
Q1. どんな疾患で起こるのか?
 高度の呼吸不全となる疾患で人工呼吸管理となる.これには肺自体の障害のみならず,呼吸を制御したり影響を与える呼吸中枢,末梢神経,呼吸筋,胸郭,循環器などに関連する疾患が関与する.
Q2. リハ処方時に注目すべき理学所見・検査項目は?
 視診,聴診などの理学所見は重要であるが,点滴や挿管チューブなどで制限されていることが多い.検査項目やモニターチェックでは動脈血液ガス,気道内圧,パルスオキシメーター,胸部X線写真が重要である.また呼吸モードも把握しておく必要がある.
Q3. 訓練内容は?
 人工呼吸管理下では呼吸・排痰訓練以外にはリラクゼーションや関節可動域訓練,筋力維持訓練など限られた内容となってしまう.したがって適切な呼吸訓練,排痰訓練を行うことで呼吸機能の改善を図り,早期に人工呼吸を離脱することが必要となる.
Q4. リスク管理は?
 リハ医が病棟担当医と密に連絡をとりながら随時PTに呼吸・循環などの変化について情報を提供する必要がある.可能な限り看護師あるいは担当医付き添いで治療を行うのがよい.
Q5. リハのステップアップは?
 人工呼吸器が装着されている限り,リハのステップアップが困難であり,できるだけ早期に人工呼吸からの離脱(ウィーニング)を図ることがステップアップにつながる.



ドレーン留置とベッドサイドリハビリテーション
 安保雅博・中山恭秀・鈴木 裕・宮野佐年
 Key Words:ドレーン ベッドサイド リハビリテーション

内容のポイントQ&A
Q1. ドレナージの目的は?
 目的によって治療的ドレナージ,予防的ドレナージ,情報的ドレナージに分けられる.
Q2. ドレーンの種類は?
 フィルム型ドレーン,チューブ型ドレーン,サンプ型ドレーンに分けられる.
Q3. ドレーン留置されている患者に対してリハ処方時に注目すべき項目は?
 どのような目的でドレーンが留置されているか理解しなければならない.また,主治医と安静度やドレーンに関する詳細な相談が必要である.
Q4. ドレーン留置されている患者に対する訓練内容は?
 ドレーンが留置されていることで,リハの適応が限られることはない.しっかりとした痛みのコントロールが必要である.状況に応じた目的あるリハプログラムが必要である.



脊椎・骨盤癌転移患者のベッドサイドリハビリテーション
 村田英之・長野 昭
 Key Words:転移性脊椎腫瘍 脊髄損傷 ターミナルケア

内容のポイントQ&A
Q1. どんな場合に行われるのか?
 (1)術後早期,(2)化学療法や放射線療法中,(3)疼痛のため座位不能,(4)骨折のリスクが高い場合,(5)終末期で全身状態不良の場合などがあげられる.
Q2. リハ処方時に注目すべきチェックポイントは?
 (1)理学的所見,バイタルサイン,(2)疼痛や麻痺の程度,(3)本人への告知の有無,(4)これまでの治療と今後の治療方針,(5)骨脆弱性や病的骨折のリスク(画像所見より),(6)姿勢・動作と疼痛との関係,(7)麻痺がある場合は褥瘡や起立性低血圧の有無などをチェックする.
Q3. リハの進め方は?
 生命予後などからまず長期的なゴールを決め,毎日みたうえで状態に応じた訓練を設定する.
Q4. リスク管理は?
 骨折のリスクに対しては,禁忌動作や荷重の程度に関する情報を十分に得ておく.感染の予防および拡散を防ぐため,院内のマニュアルにそってマスク装着,手洗いの励行,ガウン着用などを行う.
Q5. リハのステップアップは?
 患者の全身状態,術後の安静期間,化学療法,放射線治療など他の治療法とのかかわりによって決定される.逆に,本症では精神的サポートという観点から,最後までベッドサイドリハを続けざるを得ない場合もある.