8月3日(月),“Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)オンライン版”にて,辻孝教授(東京理科大,オーガンテクノロジーズ取締役)のグループが,歯の機能的な再生が可能であることを発表した.

研究成果を解説する辻孝教授
なお,本研究は山本照子教授(東北大),春日井昇平教授(東医歯大)との共同研究であり,厚労省・厚生科研費補助金「再生医療実用化研究事業」,文科省科研費補助金特定領域研究「バイオ操作」研究班,文科省科研費補助金基盤研究(A)の研究補助金を受けて推進されたものである.
辻教授のグループは,すでに2007年に「器官原基法」を発表し,歯胚由来細胞である上皮細胞および間葉細胞を利用して再生歯を組み立てる成果で世界から注目を集めていた.今回は,その器官原基法を利用して,再生器官が生体内で正常機能する可能性を示したものである.
マウスの上顎第一臼歯の抜歯後,3週間で自然治癒した歯槽骨に器官培養した再生歯胚を埋入したところ,約50日で再生歯が対合歯と咬合する状況まで萌出,組織学的に正常歯と同様な結果を示した.


マウスへの再生歯と移植83日の組織像(辻教授提供)
また,萌出した再生歯を実験的矯正を行ったところ,歯槽骨における圧迫側での破骨細胞の骨吸収や,牽引側での骨芽細胞の骨形成が見られ,歯根膜の正常な機能が確認された.神経線維についても,組織学的に歯髄・歯根膜への侵入が見られ,刺激応答能の解析を行ったところ中枢神経への伝達が確認されるなど,再生歯が神経機能を備えていることも確認できた.


再生歯の咬合関係と歯髄における神経線維の分布(辻教授提供)
本研究は,歯に限らず,毛髪や臓器へも応用可能な技術であり,臓器置換再生医療へ大きな方向性を示したものである.
今後,再生医療の実現化へ向けて,患者由来の形成細胞の探索,および移植後器官発生までの期間の短縮,生体外での再生器官育成システムの構築が課題となる.