3月29日(土),日本歯科大学富士見ホール(東京都千代田区)にて,標記講演会が開催された.

本学会は,15年にわたって行われてきた「日本臨床歯科補綴研修会」修了者によって構成されており,治療にあたって押さえておくべき基本的事項を明確にしながら,職種を超えてそれを共有し,患者にエビデンスに基づいた医療を提供していくことを目標としている.この日は同研修会の15周年記念講演と,学会会員講演の2部構成で講演会が行われた.
記念講演①では,桑田正博氏(愛歯技工専門学校)が「適切なクラウンカントゥア,エマージェンスプロファイルとはどういう形態か?」と題して講演.PFMの開発に始まり,長年にわたって修復治療の最前線に身を置いてきた経験から,歯冠の“底”,つまり修復物と歯冠周囲組織との調和を図るための基準を提示した.特に歯の解剖学的形態を基本に据えた“そこにあるべき姿を再現する”修復治療の重要性を,重ねて強調した.
記念講演②「補綴装置内部構造としての支台歯が有するべき形態とその形成基準」では,西川義昌氏(東京都開業)が,支台歯形成の実際について解説.支台歯の形態により補綴装置はその外形が規定されることから,講演では臼歯と前歯に分けて支台歯形成の基準を詳細に検討し,細菌と力のコントロールを図った症例を供覧した.
記念講演③では小出馨教授(日歯大新潟)が「補綴装置を顎機能に調和させる咬合構成の7要素とは」として,咬合,すなわち補綴物の“天井”の基準を解説した.咬合は中心咬合位の位置・接触関係・安定性,偏心位でのガイドの部位・方向,咬合平面の位置・彎曲度という7つの基本的要素で構成されており,その7つをどのように診断し,咬合を構築するのか,詳細に示した.
記念講演④では星久雄氏(星デンタルラボラトリー)が,小出教授の解説した7つの基本的要素をラボサイドでどう構築していくのか,具体的な手技を臨床例とともに供覧.チェアサイドとラボサイドが一定の基準を共有し,共通の治療ゴールを目指していくという学会の目標が,まさに具現化された内容となった.
会員講演①では,大西一男氏(宮崎県開業)が「シングルクラウンの治療をモデルにした診査診断の重要性」と題して,1本のクラウンによる補綴に際して,どのように力や細菌因子のコントロールを行ったか,その診断から治療の実際までを解説.学会のコンセプトが隅々まで行き届いた症例発表となった.
会員講演②の宮本績輔氏(神奈川県開業)は,「顎口腔系諸組織との調和を図るコンプリートデンチャーの印象」として,印象採得の術式を解説するとともに,日常臨床的に応用可能な咬合採得におけるポイントを示した.
約400名の熱心な参加者からは,記念講演の演者によるディスカッションを求める声も,すでにあがっているという.補綴臨床の“基準”づくりを進める同学会の歩みは,本講演を機にさらに加速しそうな印象を受けた.