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4学会合同リレー講演 ―健やかに育つ親子をサポートする― 開催される
 7月30日(土),標記会が東京歯科大学水道橋校舎(東京都千代田区)にて開催され,142名の参加者が集まった(大会長:新谷誠康/東歯大,弘中祥司/昭和大).本会は,口腔衛生関東地方研究会,日本小児歯科学会関東地方会,一般社団法人日本障害者歯科学会,日本歯科衛生学会の4学会が主催し,毎年夏にワークショップ(WS)が開催され,4年に一度シンポジウムという形で総括するもの.2014~2016年の総括年である本年は,各年のWSプロダクトの紹介と共に,3題の講演が行われた.

 講演Ⅰ「健やか親子21(第2次)の推進に向けて」では,井上美津子氏(昭和大学客員教授)が登壇.母子歯科保健における取り組みである「健やか親子21(2001~2014)」および「健やか親子21(第2次)(2014~10カ年計画)」について解説した.「健やか親子21(第2次)」では,すべての子どもが格差なく健やかに育つ社会を目指しており,歯科の特徴を活かした取り組みとして,口からきちんと食べることの支援を通じた関わりや,日本歯科医師会,日本小児歯科学会における活動の実際が紹介された.第1次計画で悪化した二つの指標,「十代の自殺率」「全出生数中の低出生体重児の割合」もふまえ,今後の課題として,思春期保健対策,周産期・小児救急・在宅医療の充実,地域での支援体制作り等が挙げられた.
井上美津子氏
 講演Ⅱ「小児在宅医療における歯科衛生士の役割」では,中村郁子氏(茨城県牛久市・兼久歯科医院/歯科衛生士)が登壇.先天性ミオパチーや重度心身障害などを抱えた,医療的ケアを必要とする小児の在宅医療ケースを提示し,各症例に対して実施した口腔ケアの詳細から,歯科の介入がもたらした子どもと家族の心身の変化を紹介した.高齢者の在宅医療にも関わる自身の経験から,患者さんの年代を問わず,在宅医療では全身の状態も正しく把握し,変化に気づく目をもつことがまず大切であることを強調.そのうえで,特に小児在宅医療では,歯科衛生士の定期的な介入が小児患者さんの口腔内環境を改善するだけではなく,その家族の物理的,精神的な負担をも大きく軽減し,患者さん・家族の信頼を得ることでより深く多職種連携の輪に入っていくことができると述べた.
中村郁子氏
 特別講演では,「発達障害児に対する気づきと支援 ~ちょっと気になる子を豊かに育む環境とは?~」と題し,小枝達也氏(国立成育医療研究センターこころの診療部/小児科医)が登壇.注意欠陥/多動性障害(ADHD)や軽度精神遅滞(MR),学習障害(LD),自閉症,アスペルガー症候群など,発達障害をもつ子どもとその親の支援について解説した.小枝氏が鳥取県内で行ったコホート研究(5歳児を対象に,中学校就学時まで10年間を追跡調査したもの)を元に,子育てにおける関わりからみえる,子どものその後の成長・性格傾向等が紹介され,多くの聴講者の関心をよんだ.発達障害については,医療人としては“疾患”と捉え,然るべき支援や必要に応じた薬物療法を行うべきであること,発達障害の子どもに対峙する際は,子どもだけでなく親も含めた“子育て支援”であり,よき人間関係が指導の前提であること,子どもの自尊心を傷つけたり追い詰めずプライドを尊重すること,安心感を与え,満足する日々こそが子どもを育てることを忘れずに接してほしいと場内へ訴えた.
小枝達也氏

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