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第75回日本公衆衛生学会総会開催される
第75回日本公衆衛生学会総会が,10月26日(水)~28日(金)の3日間,『次世代の健康社会実現のための公衆衛生人材育成』をテーマに,グランフロント大阪にて開催された.
本学会は,1947年に設立され,現在は,医師,歯科医師,看護師,保健師,管理栄養士,歯科衛生士,行政関係者など公衆衛生にかかわる8,000人を超える多くの専門職からなる日本における公衆衛生の要学会の一つである.
口腔保健分科会では,10/27(木)に口演発表として2フレーム8演題,1シンポジウムが組まれた.
シンポジウム26『小児の口腔保健における健康格差の現状とその対策』(座長:大西宏昭氏・関西女子短期大学養護保健学科/三宅達郎氏・大阪歯科大学口腔衛生学講座)では,近年,小児のう蝕が減少しているが,その一方で健康格差があることを報告すると同時に,小児の口腔保健対策として“う蝕”対策だけでよいのか論じた.山縣然太朗氏(山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座)は,「小児の健康格差からみた地域歯科保健の課題」として,「健やか親子21」の約8割は目標達成できているが,逆に増加しているものとして,10代の自殺,低出生体重児,児童虐待であること,また“う蝕”においては,目標はクリアーできているものの,都道府県単位では上位と下位とで2.5倍もの格差があることをデータで示した.大久保公美氏(国立保健医療科学院)は「食育における栄養と歯科との連携」として,「何を食べるか」に加えて「どのように食べるか」が大事であって,食べる速さと肥満の関係の調査報告とともに,健康格差を予防するために,人生の早期から生理学的なアプローチをする,いわゆるライフコースアプローチを歯科医療従事者が担うべきだと提言した.三浦宏子氏(国立保健医療科学院)は「小児期の咀嚼能力評価の現状と課題」として,食育同様,ライフコースをふまえた口腔機能についてのアプローチの必要性を説いた.最後に尾﨑哲則氏(日本大学歯学部)が登壇.「地域保健としての小児・学童期の口腔保健の現状とその社会的対応に向けて」として,健康格差は都道府県・市町村・都会と地方・家庭などさまざまにおいて生じうることで,全てを改善しようと思うのではなく,その地域の要因を分析して取り組むことで,結果的には全体が改善されればよいのではないだろうかと解説した.某小学校において月に数回シルバー人材センターの高齢者と一緒に給食を食べるという取り組みを行ったところ,食後の歯磨きの時間に,高齢者が総義歯を外して義歯を洗う場面を小学生が見て「歯が全て外れた!?」と驚いたことがきっかけとなり,児童が積極的に食後の歯磨きをするようになったという自身の保健事業の事例を挙げながら,地域リソースを上手く使うことを提案した.
シンポジウム26の様子
シンポジウム31『日本公衆衛生学会認定「専門家制度」のさらなる発展に向けて』では,尾﨑哲則氏が「歯科保健専門職の展開」として,公衆衛生における歯科としては,健診とう蝕予防だけではなく,糖尿病の第6の合併症が歯周病であることをはじめとして,NCDsと歯科との関係性,周術期の口腔ケアの重要性などを解説し,地域で歯科をもっと活用してほしいと多職種に向けて発信した.
本学会における歯科医療従事者の会員はそれほど多くはないものの,公衆衛生活動における歯科の役割は重要であるとともに新たな活躍の場になることは間違いなく,今後の益々の発展を期待したい.

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