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第23回日本歯科医学会総会・日本デンタルショー2016福岡 開催される
第23回日本歯科医学会総会が,10月21日(金)から23日(日)の3日間,福岡国際会議場および福岡サンパレス(ともに福岡市)の2会場にて開催された.
 日本歯科医学会総会は,日本歯科医師会と日本歯科医学会が,歯科医学の研究成果を普及・開発することを目的に,4年に一度開催している,歯科界最大の学術大会であり,九州・福岡市で開催されるのは総会史上初となる.
 今大会は 福岡歯科大学が主幹校となり,水田祥代会頭(学校法人福岡学園・福岡歯科大学理事長)のもと,「歯科医療未来と夢 (New Paradigm for Dental Medicine : Its Futures and Our Dreams)」をメインテーマに開催された.
 標記総会は2名の講師による開会講演で幕を開けた.一人目の講師として,「iPS細胞研究の現状と医療応用に向けた取り組み」と題し,山中伸弥氏(京都大学iPS細胞研究所 所長/教授)が登壇.はじめにiPS細胞の基礎的な知識や研究所の紹介をしiPS細胞の研究には臓器の回復・再生と治療薬の開発という大きく2つの目的があると述べ.薬の開発にはiPS細胞を用いた病気の再現が安価で行えることが効果的であると論じた.


 
山中伸弥氏
 二人目の講師として,東京理科大学特任副学長の向井千秋氏が登壇.「宇宙飛行から学んだこと-有人宇宙探査と歯科医学への期待-」と題し,医師であり,かつ日本人初の女性宇宙飛行士である氏が,宇宙の微小重力環境の下で実施したさまざまな研究について講演.なかでも,宇宙旅飛行中の飛行士の口腔衛生状態の悪化に関する研究は興味深く,聴衆の関心を多いに引く内容であった.

向井千秋氏
 開会講演に続く開会式は,九大フィルハーモニー・オーケストラによる優雅な演奏から始まった.演奏後,会頭講演として水田祥代氏が登壇.
「輝いて美しく―女性医療人へのエール―」と題し,旧帝大医学部で初の女性外科教授,初の女性病院長,理事・副学長という自身の経歴を踏まえ,女性医療者に意思決定の場への参加をめざすことを躊躇しないで欲しいと述べた.講演の最後に,「美女,才女,猛女のDNA を持つ女性医療人たちよ,“健康で,美しくて,賢くて,あったかくて,そして強い志を持つ人に!”」と,女性医療人へ熱いエールをおくった.
 会頭講演後,国歌斉唱,柳川忠廣副会頭(日本歯科医師会 副会長)による開式の辞,水田祥代会頭による式辞,住友雅人氏(日本歯科医学会 会長)および堀 憲郎氏(日本歯科医師会 会長)による挨拶が続き,文部科学省,厚生労働省,福岡県,福岡市など各方面の代表からの祝辞が披露された.

九大フィルハーモニー・オーケストラ
水田祥代会頭
 10月22日(土),大会2日目午前のシンポジウム1「全部床義歯を進化させる-新技術と伝統との融合-」では,モデレーターに市川哲雄氏(徳島大学)が,演者に阿部二郎氏(阿部歯科医院/東北大学),河原英雄氏(歯科河原英雄医院),上濱 正氏(ウエハマ歯科医院),金澤 学氏(東京医科歯科大学),熱田 生氏(九州大学),松田謙一氏(大阪大学)が登壇.
 デジタル化や要介護高齢者の増加といった社会的環境の変化を踏まえながら,歯科補綴治療の基礎であり,今なお議論され続ける全部床義歯について,臨床例等を紹介しながら持論を展開した.
質疑応答の様子
 同日の午後の講演6「認知症の症候学と食行動異常」では,座長に平野浩彦氏(東京都健康長寿医療センター)が,演者に池田 学氏(大阪大学大学院)が登壇.
 池田氏が認知症のうち,わが国で多いそれぞれの認知症の初期症状をわかりやすく解説した.初期であれば,投薬により症状が回復・維持できる認知症が多いため,歯科医院に定期的に通院する患者さんの症状を歯科医師や歯科衛生士がみて,認知症の可能性があることを察知し,疑いがあるようであれば専門医へ紹介したり,家族の方に相談するなどしてほしいと池田氏が提言.
 認知症というと単純に記憶障害と思い込みがちだが,アルツハイマー型,レビー小体型,前頭側頭葉型などそれぞれに初期症状が異なり,無関心・意欲の低下が主な症状として出たり(定期的に通院していた患者さんが来なくなる,予約時間を間違える等),突然甘いものが好きになったり(白いご飯に砂糖をかけて食べたりするなど),食べ方が変わったり(すべての食品を混ぜてから食べる等),歯科医院での問診で気づけることが多々ある.
 「初期症状は70歳ころまでに発症するので,ぜひ歯科医院で早期に発見し,認知症の重症化に歯止めをかける取り組みをしてほしい,また,認知症予防に専門的口腔ケアや摂食嚥下機能の向上も役に立つので積極的に行ってほしい」と,立ち見も出るほどの歯科関係者に熱いメッセージを送った.

 10月23日(日),大会3日目午前のシンポジウム10「高齢者歯科のキーワードは栄養である」では,モデレーターに吉田光由氏(広島大学大学院)が,演者に武内博明氏(医療社団法人 竹内歯科医院/鶴見大学),),菊谷 武氏(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック),栢下 淳氏(県立広島大学)が登壇.
 3名のシンポジストが,経口摂取することがいかに重要であるか,またそこに歯科がもっと積極的にかかわる必要性があるということをそれぞれの立場で提言.
 管理栄養士は栄養バランスの調整は得意だが,食形態については不得意なため,歯科がもっと栄養にかかわるべきだが,歯科医学教育においても「栄養」の教育が少なく,大学の教育から系統的な講義をしていくべきだと訴えた.これから“栄養ケアステーション”のモデル事業が始まることもあり,今後の歯科医院の在り方についても注目すべきところである.
講演会場の様子
 併催行事として,日本デンタルショー2016福岡がマリンメッセ福岡で3日間にわたり開催された.2会場は徒歩で数分程度の距離であり,最新の医療機器,材料および薬品などの展示に,数多くの総会参加者が足を運んだ.

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