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　7月1日（金），2日（土），大阪大学コンベンションセンター（大阪府吹田市）にて，標記総会・学術大会が「まってたらあかん，やってみなはれ」をテーマに開催された（大会長：天野敦雄氏／大阪大学歯学部長）．今回は35回目の記念大会でもあり，35周年記念式典・記念講演もプログラムに盛り込まれ，歯科医学教育に携わる歯科医師，歯科衛生士ら約650名が参加した．

　特別講演「再生医療の現状と未来～心筋再生を中心に～」では，澤　芳樹氏（大阪大学大学院医学系研究科長／外科学講座心臓血管外科学教授）が移植に始まる重症心不全への対応の変遷，氏が取り組んでいる温度感応性培養皿を用いた細胞シートによる心筋再生についての研究・臨床応用について報告され，併せて脊髄や軟骨などの再生といった細胞工学の現状について解説された．

　35周年記念講演「医療者教育で求められるMedical Humanities：行動科学を中心に」では，福島　統氏（東京慈恵医科大学教育センター教授／教育センター長）は，学生が医療者になったときに自らの職業を実践するための知識と倫理性をどのように育てるか，学生時代の教育に「人が集団になって社会を構成したときの人」の行動を，科学という方法論を用いて解析する行動科学の重要性について提言した．「患者こそ最高の師」という恩師の言葉が忘れられないというコメントが印象深かった．

　シンポジウムⅠ「医療コミュニケーションファシリテータ養成セミナー10周年記念シンポジウム　歯科医学教育におけるファシリテーションを考える」では，鈴木一吉氏（日本歯科医学教育学会教育能力開発委員会委員）が「ファシリテータ養成セミナーを振り返る」，藤崎和彦氏（岐阜大学医学教育開発センター　MEDC教授）が「“行動主義”と“構成主義”を基盤とした教育」，木尾哲朗氏（日本歯科医学教育学会　倫理・プロフェッショナリズム教育委員会委員長）が「ファシリテータ養成セミナーにおける教育プロフェッションの育成」としてそれぞれ登壇した．2007年から始まった「医療コミュニケーション・ファシリテータ養成セミナー」は初級編（第1～3回），中級編（第4回），新初級編（第5～8回），行動変容編（第9回）と延べ237名が参加し，現在に至っているという．歯学教育の特徴は，技術的に卓越していることが強くアピールされがちであるが，国民から求められる社会ニーズが多様化している現在，患者の権利を尊重するための双方向のコミュニケーションの在り方や医療人としての基本的な態度や技能，知識を十分に習得するべきと述べた．

　シンポジウムⅡ「日本歯科医学教育学会の国際化について」では，森尾郁子氏（東京医科歯科大学統合国際機構・歯学教育開発学分野教授）が「大学のグローバル化－-現状と今後の方向性」を，魚島勝美氏（新潟大学大学院医歯学総合研究科生体歯科補綴学分野教授）が「教育の国際化に関する本学会のこれまでの歩みと今後の方向性」について報告した．2014年にSEAADE（東南アジア歯科医学教育学会）とADEE（ヨーロッパ歯科医学教育学会），2016年にADEA（アメリカ歯科医学教育学会）と交流協定を締結した．日本の歯科教育が世界的にみて高いレベルにあることを示すと同時に，歯科医学の重要性を提示するための戦略を国際的に練るためにも，世界各地の歯科医学教育学会との交流は重要である．世界に先駆けて高齢社会を経験している日本にしかできないことを発信，また，語学が堪能かどうかという問題は関係なく，まずは機会があれば，とくに若い学会員にチャレンジしてほしいと強く訴えた．

　シンポジウムⅢ「学習履歴を教育に活かす」では，田村恭久氏（上智大学理工学部教授）が「教育におけるビッグデータの活用～Learning Analyticsと歯学教育」を，小野和宏氏（新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔保健学分野教授）が「能力を把握して学びを促す－歯科臨床能力の直接評価を中心に－」について発表した．「いつでもどこでも学べる」「一人ひとりの個性・能力・意欲に応える学びを提供できる」などの直接的な学習支援にとどまらず，学習者がいつ，どこで，どのような学習をしたかという学習履歴がビックデータとして蓄積されることに注目したICT（情報コミュニケーション技術）環境の整備，活用方法などを提案．まだ課題は多いものの新たな価値を創出することも可能であることを示唆した．

　次回の総会・学術大会は，2017年7月28日（金），29日（土），長野県松本市にて開催予定（大会長：長谷川博雅氏／松本歯科大学教授）．