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第34回 日本顎咬合学会学術大会・総会開催される
 6月11日(土),12日(日),東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて,標記学術大会・総会が「新・顎咬合学が創る健口長寿」をテーマに開催された(大会長:上濱 正氏/茨城県・ウエハマ歯科医院).
 11日午前は上濱氏の挨拶による開会式から始まった.上濱氏は今回の学術大会のテーマである「新・顎咬合学が創る健口長寿」について,「咬合・咀嚼は,栄養摂取における単純な一経路であるのみならず,上位中枢の活性化を促し,精神・神経領域の充溢を導く重要な行為である.したがって,健康な咬合,咀嚼を育成・維持・再建・管理することが生涯に渡る健康寿命の源となる」と呼びかけた.

大会長:上濱 正氏
 続く特別講演Ⅰ「生涯の健康を考える」では,まずPerry R. Klokkevold氏(UCLA)が登壇し,“The Relationship between Oral Disease and Systemic Health ”の演題で講演した.氏は口腔疾患・口腔環境が全身の健康に与える影響および両者の相関関係を示す最新のエビデンスについて紹介した.
 次に登壇した垣添忠生氏(日本対がん協会)は「咬むこと,それが人生だ」という演題で,医師からの視点で口腔環境・機能と全身疾患の関係性について述べ,健全かつ適正な咀嚼機能の重要性について講演した
 三番手の演者として,河原英雄氏(大分県・河原英雄歯科医院)が登壇し,「健康長寿のために歯科にできること」という演題で講演した.氏は,医学の発展により延びた寿命に伴う,口腔の健康寿命の延命の必要性について指摘した.
 四番手には田中秀一氏(読売新聞)が「健康社会と歯の健康」について,メディアの立場から超高齢社会における歯科医療の必要性を呼びかけた.
 最後にHenry H. Takei氏(UCLA) が登壇し,“Preventive education and proper dental care ”という演題で講演し,生涯に渡る天然歯の健康維持,それを遂行するための予防歯科の重要性について述べた.
左から河原氏,Klokkevold氏,田中氏,Takei氏,垣添氏
 12日の「診療室,訪問で行うリハビリ」(座長:山口康介氏/佐賀県・こうすけデンタルクリニック)では,まず岩崎貢士氏(埼玉県・いわさき歯科)が登壇.「歯科でこそできる食支援」を演題に,食べることがうまく行かない患者に対して診療室や訪問先で行える嚥下機能評価法や介入の基本事項を解説,さらに自身が手がけた症例に沿ってその実際を示した.
 続いて登壇した寺本浩平氏(東京都・寺本内科・歯科クリニック)は「摂食嚥下障害に対する評価と支援」を演題として,訪問診療先で歯科医療者ができることを解説.とりわけ,患者が食事をしている場面をみて「患者の姿勢・食べるもの・食べ方」に注意して適切な対応をすることにより,複雑な治療などを行わなくとも嚥下障害はある程度改善できることを説明.歯科が介護の現場において実行できる,患者の生活の質の改善方法を示した.

盛況な講演会場の様子
 同じく12日の「診査・診断の原点」(座長:俵木 勉氏/埼玉県・いずみや歯科)では,「自信の持てる治療計画を目指す『診断の原点』」と題して鈴木尚氏(東京都・ナオ歯科クリニック)が講演.宮崎 啓氏,谷本博則氏,若葉健弘氏(いずれも明海大学PDI埼玉歯科診療所)のケースプレにコメントする形式で行われた本講演では,明確な臨床診断を行うためには主訴や欠損に至った要因を考えながらマクロ的な視点をもって口腔内の情報を収集すること(現症観察),そこから問題点を見つけ出し治療・メインテナンスにつなげること(推論)の重要性が強調された.そして,そのために資料の規格化に努める必要があることにも言及されるなど,3時間に及ぶ講演は臨床医としての知識・経験を積み重ねながら「現症の深読み」ができる目を養ってほしいという鈴木氏の想いが十分に伝わるものであった.
講演中の鈴木 尚氏
 同じく12日の「DH Q&A 基礎系の咬合育成」(座長:田中晃伸氏/茨城県・タナカ歯科医院)では,まず「永久歯交換期から始める咬合発育と口腔機能 育成の着眼点と疑問」と題し,小林明子氏(東京都・小林歯科医院)が登壇.歯列交換の機序を解説しながら,幼少期における健全な歯の発育交換を促すために,歯科医院が介入し支援していくことが重要であると論じた.続いて弘中祥司氏(昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学口座口腔衛生学部門 教授)が「乳幼児期の食べる機能の発達と食支援」と題し,自身が取り組んでいる研究・臨床を紹介.そこから考察される適切な食支援のあり方について,写真や映像などを用いて示した.最後に木本茂成氏(神奈川歯科大学大学院歯学研究科 教授)が登壇.「乳歯列期からの咬合育成-健全な口腔機能の獲得に向けて-」と題し,乳児期における反射としての吸啜から,学習による咀嚼期の獲得といった過程は生命の維持のみではなく,健全な歯列・咬合の育成に必要不可欠であると論じ,乳歯列期から混合歯列期における形態と機能のバランスを考慮した歯科治療のポイントについて概説した.
ディスカッションの様子
 メーカーシンポジウム「診療スタイルを変えるCR&CAD/CAM戦略~チェアサイドで実践したいテクニックとマネジメント~」(座長:上野道生氏/福岡県・上野歯科医院)では,まず「コンポジットレジン修復 発想転換で広がる自費診療適応」と題して田代浩史氏(静岡県・田代歯科医院)が登壇.接着技術の進歩により適応が広がったコンポジットレジン修復の安定した予後のために,研究成果を背景にした8つのステップをもとに解説した.次に「CAD/CAMのアドバンテージを活かすための診療プロセス」と題し,加藤正治氏(東京都・高輪歯科)が登壇.技工に偏りがちの言説が多いCAD/CAM治療であるが,エイジマネジメントなどを背景にしてドクター目線での解説を行った.

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