Ishiyaku Dent Web

歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士のポータルサイト

第65回日本口腔衛生学会・総会開催される
 5月27日(金)~29日(日),東京医科歯科大学(文京区湯島)にて,標記学会・総会(学会長:川口陽子氏/東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野教授)が約1,000人(内国際学会約200名)の参加者のもと開催された.
 シンポジウム2(座長:尾﨑哲則氏/日本大学歯学部教授)では,「輝く歯科衛生士―広がる歯科衛生士の職域―」をテーマに島谷和恵氏(住友商事株式会社歯科診療所),山本伸子氏(大津市民病院),島袋裕子氏(品川区人権啓発課長)が登壇.それぞれの現場で歯科保健・歯科衛生のかたちを模索してきた三氏が,新たな地域連携・多職種連携の一例を示した.
 島谷氏が所属する企業内診療所では,海外出張前や一時帰国中の社員が診察に訪れたり,帯同家族の相談を受けたりすることが多く,併設された医科の診療所と連携し,社員とその家族の健康を守っているという.「医科の弱い部分である予防と早期治療は歯科の得意とする分野であり,歯科からサポートすることができる」として,医科歯科が連携した糖尿病患者への対応や栄養指導,禁煙指導などの取り組みを紹介した.
 総合病院に勤める山本氏は,医科歯科連携を軸に周術期口腔機能管理や看護師による口腔のスクリーニング,ケアなどをどのように実践しているかを解説.システムづくりから携わってきた同氏は「多職種連携において大切なのは専門性を活かすと同時に,相互に理解し合うことである」と強調.情報共有の場となる勉強会はとても有意義であったと語った.
 保健所や相談所,保健センターに勤務してきた島袋氏は,行政として行ってきた活動を紹介した.さまざまな特色や悩みを持った地域・住民を十把一絡げにして考えてしまっては効果的な行政にはならないと主張.「今,行政・地域に必要とされているものは何なのか」を考え続けることや,他の専門職とコミュニケーションをとり,相互理解を深めることが大切であると強調した.
 シンポジウム3「NCD予防対策における栄養と口腔保健の連携の必要性」(座長:花田信弘氏/鶴見大学歯学部教授)では,NCDに共通するリスク因子が各ライフステージにおける低栄養であることを明らかにし,その対策として栄養と口腔保健を中心とするライフコース・アプローチの重要性について花田氏を含め,5人のシンポジストが登壇し発表した.
 大木秀一氏(石川県立看護大学健康科学講座教授)からは「ライフコース疫学における栄養の意義」として,ライフステージで区分けされたステージ別に介入する従来の予防対策のアプローチに限界があること,妊娠期から高齢期にわたる人生の流れを通じて,包括的・長期的な視野のもとで健康課題に取り組む必要性について述べられた.
 花田信弘氏は「ライフコース疫学における口腔保健の意義」として,これまで病気を待ち受ける医療であったが,これからの『8020』は,80歳まで20本の歯を残すのではなく,健康な80歳でいるために20本の歯を残すような口腔保健活動を行うべきであると提言.
 木村友美氏(大阪大学人間科学研究科)からは「食と口腔保健の関連―国内外のフィールド調査から―」として,食多様性の低下が生活習慣病に大きく関連している調査報告がなされた.
 小川祐司氏(WHO口腔保健部)は「栄養と口腔保健の連携―NCD予防対策を踏まえて―」として,2011年の国連NCDサミットで口腔疾患がNCDの一つとして位置づけられた背景を解説.「栄養と口腔保健の連携・協働を深めた健康教育,ヘルスプロモーションを展開するためには教育過程での革新的な改革も必要であり,そのためにはNCD対策について,まずは歯科医療従事者が認識する必要性がある」と強く訴えた.
 角田衣理加氏(鶴見大学歯学部)からは「日本の歯学部における栄養学教育の現状と課題―全国歯科大学栄養学関連カリキュラム調査結果から―」として,多種多様で統一された体系が存在しないことが調査から示唆され,栄養と口腔保健の連携によるNCD予防対策の教育を行う必要性があることを提言された.
 本年は例年と異なり,「The better oral health, the happier daily life」をテーマとして第12回アジア予防歯科学会と共催され,フォーラム「Current Situation and Future Challenges in japanese Dentistry」,教育セミナー「Deciduous Tooth is Parent of Permanent Tooth」,特別講演「Oral-systemic Health Linkage and Oral Health Strategy in Aged Society」など,充実した英語プログラムが組まれた.
 歯科疾患に留まらず,口腔と全身の健康にアプローチする今日の日本の歯科医療を再認識し,存分に議論し合う有意義な学術交流の場となった本学会・総会は,盛況のなか閉会となった.

■他のニュース記事をさがす

日付から記事をさがす
<2024年4月>
31123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
2829301234
567891011
キーワードから記事をさがす

人気の歯科書籍(キーワード別)

歯科雑誌 最新号