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第20回 米国歯科大学院同窓会(JSAPD)公開セミナー開催される
 1月10日(日),虎ノ門ヒルズ(東京都港区)にて,第20回米国歯科大学院同窓会(JSAPD)公開セミナーが263名の参加者を集め開催された(会長:二階堂雅彦氏/東京都・二階堂歯科医院).会発足20周年を迎えた今回は「エビデンスを超えるもの」を統一テーマに,各分野の専門医12名が,日常の臨床においてエビデンスをどのように捉え“decision making”をするのかについて語った.
会場内の様子
 午前の部最初の二階堂氏(同前)は,これまで国内外で歯周治療,インプラント治療について研鑽を積むなか,エビデンス(文献等)を羅針盤として用いつつも,歯科の特殊性(患者の多様性,ケースの多様性,等)を考慮し,ときにエビデンスにとらわれすぎずに発展させる必要性があるとまとめた.
 岡崎恵一郎氏(茨城県・おかざき矯正歯科クリニック)は「埋伏歯の矯正治療」をテーマに,埋伏歯の牽引・配列の手技の実際を紹介.CBCTやスーパーボンドの有効性,開窓術が比較的多い部位などを豊富な症例と共に解説した.
 錦織 淳氏(東京都・錦織歯科医院)は補綴治療におけるEBD (evidence-based dentistry) をテーマに登壇.一般にRCT や前向きコホート研究が限られる補綴治療はエビデンスに乏しいといわれるが,専門医として研究対象と自院患者との比較,自院での実現可能性,Humanitarianism をもって対応する必要性について解説した.
 築山鉄平氏(福岡県・つきやま歯科医院)は「20年先を見据えた歯科医療のイノベーションを考える」と題し登壇.歯科疾患実態調査と歯科先進国とのデータを比較し,社会保障費(医療・介護・年金・福祉)をふまえ,今後の医療スタイルの在り方,医療理念をもって各医院が患者の健康利益に努めることの重要性をまとめた.
 須田剛義氏(大阪府・須田歯科医院)は複雑な補綴症例に対して,エビデンスは治療の成功率を上げるために有用であること,繊細な治療計画を立案・実行することによって長期的予後に繋がると解説した.
 船越栄次氏(福岡県・船越歯科医院)は膜開放型低侵襲性抜歯窩歯槽骨保存術および歯槽堤増大術について解説.文献的にはGBR時は細胞遮断膜を完全埋包させなくてはならないが,患者の術後疼痛を避けるため前記の手法をとるという.EBM(Evidence-based medicine)の重要性を認識した上で,それが確立されていない治療であっても,新たなEBMを積み上げ築いていく努力が必要であるとし,臨床例を供覧した.
左から,二階堂氏,岡崎氏,錦織氏,築山氏,須田氏,船越氏
 午後の部の講演では「エンドポイントを探る ~統計の綾とサロゲートエンドポイント~」をテーマに菅野文雄氏(東京都・六本木ヒルズ西堀歯科)が登壇.臨床医がエビデンスを読む際に注意すべき要点をはじめ,常にエビデンスに基づく治療が行える状況ではない日常臨床において,EBM をどう捉え用いていくかについて解説した.
 石井 宏氏(東京都・石井歯科医院)は,臨床においてはできる限り,バイアスのかからない客観的で正直な情報を患者が理解できるように情報提供し,患者自身が意思決定することが重要だとした.エビデンスはこれを助けるだけのものであり,真の患者利益を考え利用していくべきものと述べた.
 梅津清隆氏(東京都・歯科オーシーキュープ日比谷)は「選択肢としての歯科インプラント治療 ~EBM とNBM のバランスを考える~」をテーマに,EBMに患者要素(身体的情報,経済的事情,等)を加味し治療計画を立てることが重要であるとしたうえで,EBMとNBMを使い分けて用いる必要があるとした.
 清水宏康氏(東京都・清水歯科クリニック)は,「日常臨床におけるエビデンスの位置付け」と題し登壇.科学的エビデンスは“平均的”な結果であり,治療の効果を示すものではない.重要ではあるがそれだけに支配されず,科学者,技術者として,患者の意思・意図を汲みつつEBMを用いていくことが求められるとした.
 田中利典氏(東京都・川勝歯科医院)は,「一症例から学ぶエンドのエビデンスと治療結果」をテーマに,器具破折,パーフォレーション,再根管治療症例等を供覧.症例を通して,エビデンスの活用方法や治癒への導き方等について解説した.
 岩田健男氏(東京都・東小金井歯科)はJSAPDの成り立ちおよび「グローバルスタンダード(世界基準)」と日本の歯科医療のパラダイムシフトについて,1970~80年代,1990年代,2000年~の三部に分けて解説.今後JSAPD会員に期待することとして,留学により得た知識・技術の臨床での検証,知識のアップデート,長期症例の論文執筆,歯科医療職へ向けた教育,留学希望者への助言などがあるとした.
左から,菅野氏,石井氏,梅津氏,清水氏,田中氏,岩田氏
 情報過多な歯科界において,会発足以来,エビデンスを元により客観的な視野で評価し,安全で確実な歯科治療を目指す本会にあって,あえて「エビデンスを超えるもの」と題し,終日かけて各専門医が登壇した.全演者に共通する見解としては,EBMの重要性や有効性を認識した上で,それらに流されるのではなく,目の前の患者の要素・背景を加味して活用していくべきであることが銘打たれた会となった.