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第57回秋季日本歯周病学会学術大会

2014年10月19日(日),神戸国際展示場(神戸市中央区)にて,第57回秋季日本歯周病学会学術大会が,「歯周病学 温故知新」をメインテーマに開催された(大会長:和泉雄一氏/医科歯科大).

「学会主導型シンポジウム/新しい医療の実現:日本歯周病学会が果たすべき学術的・医療的・社会的役割」では,医療・産業・保険者・メディアの様々な視点から,これからの歯周治療・歯科医療に求められる課題が提言された.
栗原英見氏(広大)は,これからの時代の歯科医療の課題について網羅的に整理.ますます重要度が増す医科歯科連携について,医科・歯科での共通言語が求められているとし,医療者が理解しやすい歯周病の指標の構築が必要とした.また,専門医制度の課題として,人口10万対0.8人という現状とその偏在が大きな問題とし,特に高齢化率・有病者率の高い地域への重点的な充当を,インセンティブ面も考慮しながら進めていくべきとの見解を示した.
続いて産業側からは,西永英司氏(ライオン),江口 徹氏(サンスター)が登壇.いずれも社会的ニーズにこたえる製品開発の現状を紹介した.
赤塚俊昭氏(デンソー健保)は,検診事業と医療費の相関関係について触れ,健診による受診者のQOLの向上が医療費の適正化に結び付くとの,同組合の20年の蓄積データからの検証結果を紹介した.
南 砂氏(読売新聞)は,日本の皆保険の動向に世界が注目しているなか,国策としての医療の視点の欠落を指摘.「メディカルケア」から「ヘルスケア」に視座が移りつつある世界の潮流との乖離を問題視した.

 「シンポジウムⅠ/歯周治療 温故知新」では,二階堂雅彦氏(東京都開業),弘岡秀明氏(東京都開業),松井徳雄氏(東京都開業)が登壇.二階堂氏は「サイエンスが歯周治療をどう変えたか?」と題し,エビデンスの積み重ねによる歯周治療の変遷について解説.そのうえで,現在の潮流として,歯周病の多様性,特に,歯周病に対する感受性が強い“Hyper responder”の病態発生機序が解明されつつあると述べ,これらの患者に対しては,炎症性サイトカインに対するアプローチ(サイトカイン治療)をはじめとするリスクに応じた治療計画の立案,歯周病専門医の介入が求められていると述べた.弘岡氏の「スカンジナビアンアプローチ,再考」では,プラークコントロールなどの非外科処置,適切な外科処置,その後のSupportive Periodontal Therapyを主体とした「スカンジナビアンアプローチ」を基本とし,そこに再生療法,インプラント等の知見が加わっていった歯周治療の流れを,キーとなる文献,関連する長期症例をもとに紹介.そのうえで,新たな知見の追加はあっても歯周治療の基本原則は変わらないと強調し,「スカンジナビアンアプローチは2014年現在でも十分に有効」と見解を述べた.また,松井氏は,「臨床医のエビデンスとは長期症例である」として,歯周組織の安定性のために必要な要件について,歯周組織再生療法などを行った長期症例をもとに解説した.

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「特別プログラム/再生医療新法に関する厚生労働省説明会――再生医療等安全性確保法について」では,飛田護邦氏(厚労省)が,本年11月施行の,いわゆる再生医療新法の概要と歯科研究機関,開業歯科医院における影響を,PRPの作製を例に,パブリックコメントがほぼ終了した段階の情報として解説された.

「シンポジウムⅡ/進行した根分岐部病変への新しい治療戦略」では,水上哲也氏(福岡市開業),池田雅彦氏(札幌市開業),菅谷 勉氏(北大)の3名を演者に,臨床医の頭を悩ませる根分岐部病変へのアプローチについて検討が行われた.水上氏は,CBCTによる骨欠損形態の把握よって根分岐部病変への治療選択肢を絞り込みできる可能性について,文献的・臨床的に考察.池田氏は,根分岐部病変への外傷力の関与の鑑別方法について,長年の臨床観察をベースに展開.菅谷氏は,根分岐部のデブライドメントに関する技術革新が保存的治療の成績向上に寄与する可能性について言及した.

 「シンポジウムⅢ/歯周病患者におけるインプラントメインテナンス」では,川崎律子氏(東京都・長谷川歯科医院)が,冒頭で「歯を喪失しているインプラント患者は,予防の手からこぼれ落ちた患者である」と言及.特に歯周病リスクをもつインプラント患者に対しては綿密なメインテナンスによる管理によりインプラント周囲病変を予防することが肝要であるとし,メインテナンスにおける検査項目,インプラントに対するプロフェッショナルケアの実際を供覧した.また,小林明子氏(東京都・小林歯科医院)は,歯科衛生士・歯科技工士の二つの資格をもつ立場から,インプラントの補綴的な構造,素材に応じたメインテナンスでの注意点について“適材・適所のケアを行う”ことを推奨.柔らかく傷つきやすいチタンに合わせた器具の選択や,チタンを劣化させる可能性がある高濃度酸性フッ化物やヨードの使用を避けることなど,具体的に提示した.

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次回学術大会は,2015年5月14日(木)~16日(土),幕張メッセ(千葉市美浜区)にて開催される.

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