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第62回 日本口腔衛生学会・総会開催される

 5月15日(水)~17日(金),キッセイ文化ホール(長野県松本市)にて,標記学会・総会(学会長:牧 茂氏/松本歯科大学口腔衛生学講座教授)が,約650人の参加者のもと開催された.
 15日,自由集会では,「ICDAS」「禁煙」「乳児う蝕のリスク評価と歯科保健プログラム」「酸蝕症とブラッシング」について,それぞれ複数の演者が登壇し,論議が交わされた.また,17日にも「歯科における健康」「機能性食品の機能評価」について,自由集会が設けられた.
 翌16日,シンポジウムⅠ「トレンドメーカーによるサイエンティフィック・エクスチェンジ ―口腔から挑むBioResearch:Dental Scienceのときめき―」では,天野敦雄氏(大阪大学大学院歯学研究科予防歯科学教室教授)が,「21世紀の予防歯科の根管は,“将来の発症リスクを示す予測歯科”である」として,その拠り所となるのは「科学的病因論」であると述べた.つまりは,病因論に基づいたリスクを把握し,それを考慮した予防的な対応が必要になってくるという.同氏は,歯周病の病因論,歯周治療のメカニズムを示したうえで,歯周病の予後予測マーカーとされる「BOP」「歯周病細菌P. gingivalis」「4mm以上のポケット」「喫煙」について解説.特に,自身の研究テーマでもあるP. gingivalisに焦点を当て,線毛の遺伝子型による発病リスクの違いなどに話を展開した.
口腔衛生1.JPG天野氏

 シンポジウムⅡでは,「今,歯科衛生士に求められる地域での連携」をテーマに合掌かおり氏(岐阜県歯科衛生士会),高澤みどり氏(市原市保健福祉部保健センター),唐澤恵子氏(口腔ケアステーション歯みんぐ)が登壇し,それぞれの立場からの医療連携,支援活動について紹介した.
 合掌氏が所属する岐阜県歯科衛生士会は,生後6カ月から3歳までの親子を対象とした,健康な“歯育て”を支援するボランティア事業を行っている.本事業は,乳児コースと幼児コースに分かれ月1回開催され,歯科衛生士と参加者が相互に交流できる場として,多様化するニーズに対応することに役立っているという.また,コース修了者のなかには「歯はっ子サポーター」として活動を支えるものも出てきている.
 高澤氏は市の保健センターに勤め,さまざまな歯科保健事業に携わるなか,口腔の健康をはかる「健口体操」を中心とした市民講座を開催する.現在は,その講座から住民の自主活動のグループも派生し,2011年には2,203人の参加があった.
 唐澤氏は,口腔ケアステーション歯みんぐでの活動を紹介.本組織は,地域歯科医師会の協力のもと,おもに居宅療養管理指導の訪問活動を行っている.口腔ケア,嚥下機能訓練,食形態への配慮など,多職種と連携しながら行った症例を解説した.
 3氏とも,歯科衛生士として地域歯科医療・地域歯科保健の活動を模索するなか,新たな地域連携・多職種連携の1例を示した.歯科医療機関にとらわれない歯科衛生士の働き方の広がりが感じられる内容であった.
口腔衛生2.JPG
右より,合掌氏,高澤氏,唐澤氏

 そして最終日17日には,シンポジウムⅢ「口腔保健の指標とその評価・調査方法を考える」,シンポジウムⅣ「「歯科口腔保健法」の目標を達成するための「フッ化物応用モデル」の提案」,日韓国際交流招待講演「Korea National Oral Health Surveys」などが催された.
 3日間を通し多彩な演題が組まれ,現在までの歯科口腔保健の成果をあらためて振り返るとともに,これからの歯科医療・歯科口腔保健のあり方を考える場となった.
 次回,第63回 学会・総会は,2014年5月29日(木)~31日(土),市民会館崇城大学ホール・熊本市国際交流会館(熊本市中央区)にて開催予定である.

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